『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』は未知の可能性を広げてくれる本
読書習慣を身につけたい。でもなんだか苦手と思っているあなたに。
「年間何百冊とか読めたらいいよね。でも自分には無理だな。速読しなきゃ、でしょう」
「成功する人はほとんど読書家だよね。読んだら実践しなきゃ、っていうところまでなかなかいけないんだよね」
「読書感想文が本当苦手だったよ。漫画とか活字とか、そんなに嫌いじゃないけど、なんか、ほめられることを書かなきゃいけない感がどうもあって」
本を読みたい。
でも、なぜだか苦手、そう思っている人は多いのではないでしょうか。
そんなあなたに、この本をおすすめします。
「すごい書評家でも、意外とそうなの?」とまずはハードルが下がる
まずは「はじめに」のところで、「読書が苦手」と思っていることが実は思い込みなのではないかという気づきから始まります。
本当に、根本的に苦手な人はそうそういないよ、と優しく語りかけてくれるのです。
著者の印南敦史氏は「ニューズウィーク日本版」「ライフハッカー[日本版]」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つ著名な書評家。
「ダヴィンチ」「THE 21」などにも寄稿し、今回の新刊『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)をはじめ、『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)など著作多数を持つ作家でもあります。
その読書量は年間700冊超というのですから、さぞかし速読はお手の物で、要点を脳にどんどんインストールしているんだろうな〜と、私たちは勝手にイメージしますよね。
ところが、それをのっけからくつがえされてしまうのです。
著者である僕は「すごく速く読める人」だと思われるかもしれません。
もちろん、作家/書評家という仕事柄、毎日毎日読み続けてはいます。……略……だからといって僕自身は、自分の読書ペースや精度が上がり続けているとは全く自覚していないのです。……略……「自分の読書はまだまだだ」「自分の読書に満足できない」というような思いもいまだに強いのです。……略……
ですから、とてもじゃないけれど「読書道を極めた」なんて考えられません。そんなこと、恥ずかしくて口に出せません。
「あらっ、そうなんですね!」と思わずつぶやいてしまいませんか?
著者ほどの方でもそうなのです。ましてや一般の私たちが速読ができなかったり、精度が上がらなかったりしても、何ら悩むことはない!と思えてきます。
第1章に入る前から、もうハードルが地上5センチくらいにまで下がってしまいますね。本当に、優しい。何にもこわくない。万全の態勢で、「ようこそ、本の世界へ」と迎え入れてもらえる感じです。
「なければはならない」を手放そう
ハードルがブンッと下がったところで、さらに本書は語りかけます。
まずは、次の2つのナンセンスを頭のなかから排除してください。
1 熟読し、書かれているいことのすべてを頭に叩き込まなくてはならない2 時間を効率的に使うため、速読しなければならない
確かに!せっかく読むからには、とつい念頭に置きがちなところです。
さらに「本が苦手」と思っている人は、実は苦手なわけではなく「義務感」によって読書への道を阻まれていると。
そう、自分のスキルのせいではなかったんですね。
1「読まなければいけない」という義務感
2「理解しなければいけない」という義務感
「〜しなければいけない」と押し付けられるからこそ、本当は楽しいはずの読書が苦しいものになってしまっているということです。( P37)
思えば、小学校にはいったあたりから私たち日本人にとっての読書は常に「〜なくてはならない」「ねばならない」とセットにされてきたかもしれません。
「義務感とセットの読書」にさようならを告げましょう!すがすがしいですね。
さあ、この時点ですでに、読書のハードルは地面レベル、つまりゼロの地点までリセットされました。
自由に、自分だけのために読めばいい。誰のためでもないんですもんね。一体いままで何にとらわれていたのだろうという気持ちになるかもしれません。
自由に、自分だけのために読めばいい。誰のためでもないんですもんね。
あとは、ワガママに奔放に楽しむだけです。
ワガママに楽しみながら、「自分だけの価値観をつくる」
この第2章がまたまたツボです。
私は日頃から新聞を好き勝手に読んで自分の価値をつくるということをしているのですが、そのエッセンスがここにあると思いました。
読みたくなるメソッド
↓
読み進めるメソッド
↓
習慣づけるメソッド
「メソッド」と読むと、ちょっとおカタイ感じがするかもしれませんが、全然そんなことはありません。
・「やらなきゃいけない感」から脱する
・「100%」に執着するのはやめる
・1%を見つける「フリー・スクラッピング」
・"どうしても読めない本"はとりあえず寝かす
などの「ゆるそうな」ところから取り組めばいいと思います。
冒頭で「そうそう、読書苦手なんだよね」と思った人は、多分ここでもこの順に読み進めると思うのですが、目次を「バン」と開いて眺めて、この第2章を順番に「こなさなくてはいけない」と思ってしまうかもしれません。
でも先ほど「なければならない」を手放したので、ホントにできるところからでいいと思います。
そうするうちに、自分の「本を読むコップ」の容量が増えてきて、「あ、もうちょっといけそうだ」と自然にステップアップしていける感じです。
全体に流れる「押し付けがましくない」語りかけが、スムーズに本の世界に導いてくれます。
第3章以降は、さらに「自分らしい読書」に出会うための提案だと解釈しました。
お預けにしたり、言葉にできない感覚も大事にしたりと、従来の読書にはない概念なども交えて、自分のアンテナがのびるほうに向かっていけばいいのだと思います。
「読書の苦手」を克服する以外にも応用できる「深く・広い」本
ところで、最後にワガママに勝手に解釈してみますね。
そもそも本書は読書を苦手だと思う人向けに書かれたものですが、私自身は読んでいて「あ、この考え方他でも使える」と思ったところが随所にありました。
・読書以外にも、「物、人、情報」との付き合い方に通じる
・読書以外でも「なければならない」を捨てることで、未知の可能性が広がる
・「基本に忠実」にとらわれず、ワガママに好きなように(読書をする)やってみるのも悪くない
・時間がなくても、10分20分確実に何か(読書)をすることで長く続く
・何もしていない時間に気づくと毎日が変わる
ということで、読書が苦手だと思う人はもちろんなのですが、それ以外に「何かが苦手」だと思う人にもちょっと読んでもらいたい本です。
何をかくそう、私自身は「苦手なことはしない」タイプだと思っていましたが、冒頭で「実は苦手じゃないかもよ」と優しく語りかけられたことで、「そうかも」という気持ちになり、なんだかわくわくしてきました。
何かを苦手、って実はよっぽどチャレンジした後に言えることですよね。
「セロリをなんど食べようとしてもだめだった」とか「お酒を飲もうとしたけれど、何度試しても2杯で寝てしまう」とか。
でも読書についてはきっと「何となく苦手」とだけ思い込んでいる人が圧倒的に多い気がします。
本屋さんで手に取って、この本の「はじめに」だけでも読んでみてください。
案外苦手じゃないかも、です。
そして、読み進めるうちに、無性に本を読みたくなってしまいます。
だいじょうぶ。
誰にも何にも遠慮することなく、好き勝手に読んでいいのですから。