ワークライフ・バリュー〜きっと見つかる自分らしい働き方

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イクメン推奨派ではありません。 でも、「育児と家事を50:50で分担してみれば得るものがある」と伝えたい。4-2 (株式会社オヤノミカタ 代表取締役 松井知敬さん)

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イクメン推奨派ではありません。

でも、「育児と家事を50:50で分担してみれば得るものがある」と伝えたい。

 

--- 共働きで、50:50であれば理想ですね。

 

■松井:はい。しかし、この協働状態をつくるのは、相当至難の技です。自分の場合は、なんとか軌道修正できたけど、できずに終わる家庭も多いだろうと思います。

想像には限界があります。夫が1年ぐらい主夫を経験しないと、「妻:夫=50:50」のバランスをつくるのは無理かもしれませんね。自分も経験したから分担しようと言えるけれど、経験せずにはとても言えない。

だって、フリーランス時代には床で子どもが泣いていても妻がいたからそのまま仕事をしていました。妻が育児の責任を負っていたときは、そこまで神経をすり減らさずにすんでいたんです。

 

---  なるほど。そんな松井さんは、よくイクメンと紹介されているのではありませんか?

 

■松井:ええ、正直とまどいます。「イクメンを増やすにはどうしたらいいですか?」と聞かれても、イクメン推奨派ではないですから。

イクメンどうこうよりも、育児や家事を50:50で分担してみることについては、得るものがあるとは言いたいですね。

 

---  家事育児の分担については、年代によっては「0:100」の夫婦が大半でしょうね。また、実際には夫:妻が「10:90」くらいなのに、夫だけが「30:70」くらいのつもりだという夫婦も多いでしょうね。最近になり、少しずつ「育児も家事も夫婦で分担しよう」という人たちが増えてきていますね。子どもがいながら働く母親もやっと5割を超えたそうです。

育休も今は女性主体ですが、男性も積極的に育休を取るようにすると松井さんのような理解者が増えて、会社としても戦力になりますね。

 

■松井:育児商品を開発したい時、今までは育児経験のある女性スタッフしか関われませんでした。その商品を父親も使う可能性が高いとなれば、男性も育児を経験しておくといいですよね。

私は専業主婦時代のストレスを抱える妻を間近に見ていて「何かそこに課題がある」と思っていました。その課題は、体験してみて初めてわかることばかりでした。

 

---  それが「オヤノミカタ」の原点ですね。

 

■松井:はからずも主夫生活を自分が1年間やって、大変だったので、まさにその時の自分を助けたいという気持ちでやっています。育児には親以外の誰かのサポートがないと、と実感しました。

今うちの子たちは、上から中2(女)、小4(男)、年中(女)なんですが、育児ってほんとにいろんなステージでいろんな課題があっていろんな助けが必要だなと思うんです。

 

---  赤ちゃん期だけが育児じゃないですものね。たとえば、よく言われる「小1の壁」はどうでしたか?

 

松井:うちは小学校入学当時、学童に行かせたくてトライしたんですけれど、初日から嫌だと言って行ったり行かなかったり。

私が家にいたので3時に帰ってきても大丈夫かと思いつつ、でも夏休みは行ってくれとか、いろんな思いが行き来しました。で、やっぱり合わなくて、2年生くらいで完全にあきらめましたね。

 

---  合う合わないというのがありますね。子どもによっても、その場所によっても違うし。どれが正解なんてないのが育児だなといつも思います。松井さんの会社は、育児中でも親が勤めやすい環境を作っておられるでしょう。

夫婦共働きが増えるこれからの、まさにロールモデルになるワークスタイルだと感じます。

 

松井:ありがとうございます。ロールモデルというのは意識しているところです。

今は3期目にはいりましたが、メンバーは皆在宅で仕事をし、「オフィスを持たない会社」を実践中です。ベンチャーなので、起きる変化に常に柔軟に対処しようとしたら自然とそうなりました。

 

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---  オヤノミカタになる商品をオンラインで販売されていますね。

 

■松井:自分でサービスをしたい、自分で何かを提供したいという思いがありました。

商品があって広告があれば売れるというんじゃなくて「商品が良くないと売れないよ」と思うんです。

でも、広告代理店時代は、そういう踏み込んだことを言えませんでした。クライアントの商材開発まで関わりたいと思っていろいろ試みましたが、結果的に無理だったから辞めたという経緯があります。

 

また、会社の中で新規事業を立ち上げようとしたんですが、既存の事業をしている人たちは「この人たちは何をしているの?」という見方をします。ただでさえやることがいっぱいで大変なのに、そんな他部署の人の調整までしながら事業を起こすのはすごく難しかったですね。だから独立して、起業しました。働き方についてはとても興味深いです。

 

---  ええ。よく会社員で自分の能力が今の部署で活かせていないという人がいますよね。自分の望む場所で、自分の望む働き方をしている人はひとにぎりかもしれません。

 

松井:通常の組織は管理職の下に社員が広がるピラミッド状です。それだとどうしても誰々のせいとか、環境のせいということになってしまいます。

その点、面白いなと思ったのが「特定非営利活動法人くさつ未来プロジェクト」というNPOです。

2006年に始まった育児サークルが前身で、子育て支援や地域支援、家庭教育支援を行っているところですが、そこのメンバーの方々がみな横並びなんですよ。

誰かが「今こんなこと興味あります」と声を上げると、言いだしっぺがリーダーになって、他のメンバーがサポートに回るという図式です。

この横並びの構成を最初に聞いた瞬間、「超最先端だ!」と思いましたね。

すると、やはり今面白いことになっていて、何千人規模のイベントをやったり、いろんな人を巻き込んだりする組織に発展しています。

 

---  その組織が大きくなるの、わかります。育児はもう、一昔前のように、母親だけが背負うものではなくなってきているという証拠でしょうね。

 

松井:私自身、育児を任されていたときは自分をすごく追い詰めてしまいました。目標を立てすぎて今までの仕事のやり方と同じようにやってつぶれそうになったり。

今は違う考え方をするようになりました。自分にできることをやればいいんだ、と。男性が育児をする価値というのは、そこだと思うんです。

 

ツイッターでお母さんと会話していると「夫が冷たい、なぜ自分を思いやってくれないのか」という話をよく聞きます。でも仕事がメインで仕事脳になるとその考え方にいかないんです。仕事脳になると、それはあなたの仕事だからあなたが頑張ればいいとつき離してしまうんです。

私の場合は、自分で子育てを体験したから、本当にどうしようもないことがあるとわかりました。

今まで仕事をしてきて課題解決は当然のことだったので、育児でも何か課題を見つけたら絶対乗り越えられると思っていました。

でも「仕事とは違う、ひとりでは乗り越えられないものがある」と知ったんです。初めて気づいて、それはすごく大きかった。いろんな立場の人の気持ちがわかり、自分の幅が広がりました。

だから、ぜひ男性は「主夫」をやりなさい、とは言えないけれど、やって体験すると得るものがあることは伝えたいですね。

 

---  これからどんなテーマに取り組んでいきたい、というお考えがありますか?

 

■松井:今は、自分も会社も下積みの時代だと思っているんです。私自身、いろんな人と出会って、ネットワークもつくりながら、情報発信もしながら親としての体験、会社としての体験を重ねていきたい。

その体験を生かして、さまざまな問題解決をしながら、自分たち以外の「オヤノミカタ」もふやしていけたらと思っています。

 

本当に、体験が私たちの味方をしてくれますね。

子どもと親を取り巻く状況は、日々変わります。そして、目の前の子どもたちもめまぐるしく成長していきます。

これから、どんな体験をされ、どんな出会いをされ、どんな課題を見つけていかれるのか。

私も、その未来が楽しみでなりません。本日はありがとうございました。

 

■松井:ありがとうございました。

 

 

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松井知敬さん プロフィール 

1978年生まれ。灘中、灘高、京大工学部を卒業。在学中にWeb制作を始め、その後、IT業界で活動。ワーカホリックな会社員生活から、一転、子育て中心の主夫生活へと移行し、子育てにおける両端の立場を経験。子育てを大変にしている要因は何なのか、親たちの深層心理やその裏にある社会背景を読み解いていく「オヤノミカタブログ」の筆者。36歳で株式会社オヤノミカタ設立。滋賀県大津市在住。3児のパパ。

 

株式会社オヤノミカタ

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 【ワークライフスタイル・インタビュー 4-1

 

 

このインタビューは、対談の内容をそれぞれの立場からのインタビュー形式にリライトしたものです。オヤノミカタレポートで、オヤノミカタ 公式キュレーター 松本裕美さんもう一つのインタビューをご覧ください。