ママ目線で書いたことで、公共トイレが変わった! ささやかだけれど、社会を変えられると思った瞬間。3-1(ことばキャンプ 代表者 高取しづかさん)
【ワークライフスタイル・インタビュー 3-1】
■ 話し手:ことばキャンプ 代表者、作家
NPO法人JAMネットワーク 代表
高取しづかさん
---- 聞き手: 前田めぐる
もしあなたにお子さんがいらしたら『子どもと出かけ〇〇遊び場ガイド』(丸善メイツ)という本を見たことがあるかもしれません。
1989年頃から東京を皮切りに各地で発刊され、ブームになった本です。子どもと一緒に出かけられる場所がいっぱいあるんだなとうれしくなったのを思い出します。
今も年刊になっているそうで、最近になり、この本に高取しづかさんが深く関わっておられることを知りました。
どんな風に、ライターとしてスタートされたのかというあたりから、お話をうかがってみました。
ママ目線で書いたことで、公共トイレが変わった!
ささやかだけれど、社会を変えられると思った瞬間。
---- 執筆の世界には、どんな風にして進んでこられたのですか?
■高取しづかさん(以下敬称略)
大学卒業後、大手企業に入社しました。当時は総合職とかなく、毎日お茶汲みやコピーの日々にあきたらず、夜、速記の学校に通っていました。書くことにかかわりたかったんですね。結婚退職後は、編集プロダクションのアルバイトをしていました。編集だけでなく記事を書きたい!と思うようになり、夫からも「もっともっとがんばれ」と乗せられて(笑)雑誌の取材記者になったんです。
消費者関連の小さな雑誌だったから、企画して取材し記事にまとめたり、他にもなんでも自分でやりました。企業や役所、研究所などどこへでも突撃して、たくさんの人の話を聞く日々はすごく面白かったです。
子どもが生まれて雑誌社を退社しましたが、その後も細々と記事を書く仕事は続けていて、幼稚園に入園と同時に雑誌社に復帰。子どもを育てながら、取材記者として駆け回っていたんです。
---- 本の執筆はどんなことがきっかけだったのですか?
■高取:そんなとき、友人に誘われ「子育てネット」のメンバーになりました。
編プロを経営していた友達と4人で、ママだって出かけたい!遊びたい!「じゃ、自分たちが欲しい本を作ろうよ」と話している中から「子どもと遊ぶあそび場ガイド」の企画ができました。
これはほんとに大ヒットしたんです。20年前のことでテレビにも出ました。
「あそこいいよ」と誰かが聞けば、子どもを連れて出かけてみる。私も、幼稚園就園前の娘と一緒に、たくさんの遊び場に出かけました。飲食店なら実際に食べてみる。トイレがあれば使ってみる。遊び場があれば遊ばせてみる。その遊び場が、子連れにとって本当にいい遊び場なのか、ママ目線でチェック。自分たちが子どもを連れて歩き、見たもの、感じたことを細かいところまで記録。イラストレーターに伝えて、楽しいイラストにしてもらいました。
そんな風にママたちの手でつくられた本は、大手新聞社からの取材も受けました。
「ママの目チェック」で公共トイレが変わった、という話を聞いて「ささやかだけれど、社会を変えられる」と感動しました。
⇦今も年間になっているあそび場ガイド
--- その感動が、後に立ち上げられるJAMネットワークの原点になったのではないでしょうか。
『遊び場ガイド』は、まさに新しい育児本のさきがけでしたよね。私も、子どもが小さいときに買いました。あの本から、ママ目線の本が増えていきましたね。今のようにインターネットの情報もなかったので、すごく助かりました。
■高取:ありがとうございます!「こんな本が欲しかった」といろんな人に言われました。
取材記者をしていたので、子育てネットの本作りにも関わらせていただきました。でも、本作りを手伝っていたあるとき、子育てネットの主宰者の高橋さんにすごく怒られたんです。
「うまいけど、流して書いてる。どうせ書くなら今までにない視点で書きなさい。本当に読者にとって意味のある本を作りましょうよ」と言われました。
ハッとしました。髙橋さんは厳しかったけれどクォリティの高いものを作る人でしたから、そう言われて落ち込みつつも、たくさんの学びを得ました。
>続く