デザインは組織力。1人ひとりの成果を最大限に生かしたい 1-3(小泉達治さん・有限会社コイズミデザインファクトリー 代表取締役)
【ワークスタイルインタビュー:1-3】
小泉達治 さん(有限会社コイズミデザインファクトリー 代表取締役 )
http://www.koizumidesignfactory.com
---- 聞き手: 前田めぐる
■小泉: それから、いま残業をするなということがすごく言われるでしょう。
残業=悪、みたいな。何時間削減するとか、数字の上だけの話になっています。
そうじゃなくて、人にフォーカスしたいと思いますね。
残業してる、何してるんだろう。何かを達成したくて、本人の意思でやってるんだとわかったら、それはさせてあげたほうがいですよね。能力以上の仕事をやってて、それをクリアしたくてやってることもあるでしょうし。
とにかく、数字よりも「人」をものさしにしたほうがいい。そしてその「人」はひとりひとり違うわけです。個性も能力も。
それを数字でしか判断しないから、ブラックかそうでないかの論議になる。
もちろん、ニュースになるような、あんな性質のブラックはいけませんが、残業時間という数字だけで判断したら、人も会社も伸びません。
もっと1人1人をみなくちゃいけないんですが、それができるマネージャーがいないからブラックになるんだと思います。
-----たしかに。そうやって、社長がじかにそれぞれの社員さんを見守っている環境で仕事ができることは幸せです。
1人ひとりを生かせる10人の会社と、そうでない10人の会社とでは明らかに違いますね。
■小泉:そうなんです。デザインは組織力、だと思います。
大企業と同じことはできないですから、1人ひとりの成果を最大限に生かすことが大事です。
-----それでも、若かったスタッフさんが、また教える側になってこられたというのは楽しみなことですね。5年後、10年後と考えればさらに楽しみです。
■小泉:ちょうど今、いい感じの年齢構成なんです。
40代の主婦、40代の独身、30代の主婦そして、子どもがいる在宅の主婦,20 代から30代にかけて、主婦と独身者……と続いています。
かたちとしては、非常にいい感じです。
-----子どもがいると全く新しい体験ができて、新しいアイデアがわくので、事務所としてもこれからこういうところをクライアントにしていきたいねとか、いろいろ生まれてきそうですね。
■小泉:スタッフだけのブログがあるんです。在宅のスタッフも書込むし、主婦のスタッフも書込むし、独身スタッフも書き込むんですね。
多分ご覧になると「ここの会社ってよそにはないな」と見てもらえるんじゃないかと思えます。
そういうことがうちの事務所にも大きな貢献をしてくれていると思います。
-----こんな人たち、まさにユーザーと一致する層のクリエイターがつくっているということは、まさに「望む形がここにある」と思わされます。
■女性からみれば、働きやすい会社だと思います。
-----スタッフさんに仕事を任せる、託すというのは、やりやすいことでしたか?
■小泉:少ない人数でやっていた時期などは仕事が常に満杯状態なんです。
すると仕事を振るしかなくなってくる。ただ一番上と下とでは仕事のスキルも違うから、同じ仕事を回せない。となると、違うレベルの子たちに違う仕事をどうふりわけて、伸びていくか。そのむずかしさは常にあります。
-----その采配は、どなたがなさるのですか。
■小泉:それはぼくがします。もしくは、いちばん上の女性スタッフ2名ですね。
---- 監督さんがいて、マネージャーさんがいる。そんな感じですね。
■小泉:うちの仕事の進め方がよそと違うのも大きいと思います。よく他所で聞くのは担当制なんです。
デザイナーが5人いたら5人それぞれにクライアントをふる。すると、Aさんは忙しく、Bさんは暇ということもある。AさんにBさんの仕事を聞いてもわからないし、その逆も分からない。
ところがうちは、1つの仕事を、複数のスタッフで分業しながら関わるので、レベルごとに仕事が皆あるんです。入ったばかりのスタッフは文字のトレースや画像の変換などばかり1 年くらいやるんです。だんだんレベルがあがっていくと、定期ものの決まったデザインをやってもらう。
徐々にレベルが上がっていって長くいると1から10 まで自分でできるようになるわけです。
だからうちのスタッフは、1日の中でもいろんなクライアントの仕事をします。
-----人が育つ仕組みがちゃんとできている、という感じですね。
■小泉:それは考えてそういう方法にしたんじゃなくて、最初は誰もできないのは当たり前で、できることをしてもらう。そこから進めて今のかたちになってきただけなんですが、でも聞くとそうじゃない事務所が多いみたいです。
そこは、他所とは大きく違うところですね。
----代理店の仕事もなさるんですか。
■小泉:代理店からの仕事は、ほぼゼロです。
昔から、あまりないですね。ぼくがそういう人脈のある会社にいなかったのもあります。 アパレル会社であり、その関連であり、そこを知っている印刷会社であり……そういうところの仕事が常に満杯の状態でやってきました。
営業をする時間もなかったんですね。
-----コンペを引き受けておられますか。
■小泉:ないとは言いませんが、なるべく参加しないようにしています。
よほど策があれば別ですが、こちらから進んでやらせてというのはないですね。
コンペというのは、条件が一緒とも限りませんし。値段だけで決まることもあるでしょう。選ぶ基準がちゃんと見えてなかったり、最初と違ったり。
最悪なのは、3社なら3社のプランを前に並べて、たとえば投票形式で決めるときです。一見平等なようですが、これほどよくない選び方はない。
たとえば票が一番集まったとしてそれがベストかどうかは言いきれない。結局大衆に迎合するものになってしまいます。
デザインってそうなったら絶対良くないでしょう。だから、投票形式であればうちは降りると言います。
-----それがいいと思います。
>続く
男性デザイナーがつくったものと女性デザイナーがつくったものは明らかに違う 1-2(小泉達治さん・有限会社コイズミデザインファクトリー 代表取締役)
男性デザイナーがつくったものと女性デザイナーがつくったものは明らかに違う
【ワークライフスタイル・インタビュー:1-2】
小泉達治 さん(有限会社コイズミデザインファクトリー 代表取締役 )
http://www.koizumidesignfactory.com
---- 聞き手: 前田めぐる
----- 面白いですね。ところで、女性の感性を信頼して一緒にお仕事をされてきていて、実際にクライアントさんからの印象はどうですか。
あなたのところは、こんなところがいい、あきらかに他と違うと言われるなどの評価はありますか?
■小泉: はい。まず、うちのクライアント、たとえば印刷会社などは男性の営業担当者のほうが多いんですね。
そうするとクライアント社内で男性デザイナーがつくったものと、うちの女性デザイナーがつくったものは、明らかに違いますし、そう言われます。
いい悪いではなく、差異がある。つまり先方にはないものを持っているということで、重宝されます。
男性のデザインと女性のデザインはどうしても違うんです。
たとえば、グラフイックデザインでパンフレットなどつくっても、やはり男性のつくったものと女性のつくったものは違います。
うちにしてみれば、自然で普通のことなんですが、クライアントにしてみれば「違う」となるんです。
女性は細かいところまでデザインします。たとえば、ぼくならインパクト勝負でバーンと作って、細かいところは後で考えようとします。ところが女性スタッフの場合は、最初から細かいところまでデザインします。
きちっと詰めた上で組もうとしますね。その点は明らかに違います。
----- 字詰めとかタイポグラフィの選び方とか、違いますよね。
■小泉: そうですね。ラフなんかでも、ダミーの文章なんかでもこだわって貼りつけていますね。
----- よくダミーだからと「これはダミーです」っていうテキストデータがびっしり連打してあるラフがありますが、ああいうのはどう思われますか。
■小泉:あれは、見た目がかっこよくないですよね。どこかに「らしい文章」を見つけて貼り付けるようにしますね。ダミーですって入れても、タイトルとキャッチにはそれなりの、ダミーの本文でも、冒頭のところはそれらしい感じの文章にするとか。
----- やっぱり(笑)。そうですよね。
■小泉: ええ、日本語って漢字もひらがなもあるわけです。
その内容によって、出てくる漢字があり、字面があります。
その本文に、全くキャッチやタイトルと異質な漢字や、かながたくさんあると、妙な違和感は出てくるんですよね。
そのあたりを、男性はあまり考えない。中には「□(四角)ばかり並べとけばいいか」となる人もいます。でも女性は違いますね。
そういう細やかさは大きく違います。
----- そうですね。文字もやはりひとつのデザインですね。
■小泉:そういう細かいところまで、クライアントが見ているか、気づいているかどうかは別にして、やはり提案する側の雰囲気というものもある。
----- きっと、見てらっしゃいます。
もし、気づかなくても、やはりあるだろうと思います。
■小泉: そうなんです。気づかないかもしれない。でもそういうものの積み重ねなんですよね、デザインって。
気づくところばっかりじゃないんです。
----- そういうことをトップとしてお考えというのも、ひとつには、Mac以前の時代をご存知であることはずいぶん大きいような気がします。
字詰を一所懸命詰めたり、そういうことを苦心したりしていました。
DTPに切り替わって以降、そういう部分は希薄になっている気がしますが、そういう意味でのギャップを感じることはおありですか?
■小泉:それはあります。特に文字組みなどはそうです。デジタルになってからあいまいな文字組が横行しました。それは単純に組む側のスキルがなかっただけで、コンピュータのせいではないんですね。
コンピュータができないわけではなく、使い手のスキルがなくて、そういうことが起きていました。
ところが、そういうものがスタンダードになってきていて、イマドキ風に見せるためのテクニックにもなったりもしてます。
特に最近は、若者向けのカルチャー誌などでわざわざそういう文字組みにすることもあります。
最初はマイナスだったものが、スタンダードになってきたために、それを活かすようなときもあります。
かつてのようにきれいな文字組だけがベストではなくなってきた。
それを使い分けられるかどうかというのがデザイナーの力量なんだと思います。
いまどきのデザインはできるけれど、本来のきれいなデザインのできる。使い分けられる。そういう両方できるデザイナーは少ないと思います。
もちろん、機械的にソフト上で美しく詰めてくれるものはあるし、長文などでは使えるんですね。
ただ、キャッチ1本どーんと目に飛び込んでくるようなときは、スキルが問われます。
----- 主婦のかたはどれくらいの割合ですか。
■小泉:3名+在宅スタッフ1名。在宅スタッフはお母さんでもあります。半分が主婦ということになりますね。
----- なるほど!そういう今の構成になるまで、一番最初ってあったわけですよね。
女性スタッフさんに「結婚するけど、できればこのまま続けたい」と言われたとき、どうでしたか?
■小泉: 正直、どうしようかなって考えたんです。
で、現実に一番最初に主婦になったのは、うちの家内なんです。結婚してからもスタッフとしてしばらく仕事をしていたんですが、子どもができたときに、ちょっと体調も崩してしまい、専業主婦になりました。
それ以外で最初に「結婚します」と言ってきたスタッフは同時に2人だったんです。で、そのときに女性がスタッフ3名いたんです。3名のうち2名なので、その事実を受け止めて、なんとかやっていくしかないと思いました。
独立して5年目くらい。20 年以上も前のことです。ふたりとも結婚しても仕事はしたいと言っていたので、相談しました。できれば残業がないほうがということで、給与は減りますが、残業なしにしました。
当然キャパが減るので、スタッフを1名増やしました。
確かに最初不安がありました。一番がんばってくれていたスタッフが結婚して残業なしになりましたから。
-----それでも、続けてこられて、だんだん主婦としてのキャリアもできていくわけですよね。そのあたりは、仕事として活かされたり、クライアントに対して何か変化があったりしましたか。
たとえば、クライアントにアドバイスするとき、主婦としての意見が役に立ったりとか。
■小泉: 社内で、序列ができるんです。いい意味で、です。
たとえば、掃除の仕方ひとつにしても、お茶を出した後の片付けとか、細かいことですが、新人のうちはどこからどう手をつけていいか分からないんです。
そういうことも、ちゃんと手本を示したり、まとめ役になってくれたり。
当時若手だったスタッフが今もいてくれるんですが、それは助かったといいますね。その教えられる側だったスタッフが今はまた若手を育ててくれている。
----- 非常にいい循環ができていますね。
働き続けるうえで、結婚、出産といった女性のライフイベントは本当にネックになります。
■ 小泉:同じように働くことはなかなか無理ですからね。
そのかわり、結婚しても出産しても仕事が続けられるということをうちは優先して考えています。当然、独身のうちから、それにかなう人材になってほしいということを言うし、スタッフたちも自覚しています。
-----在宅の社員さんは、やはりお子さんがいらっしゃるから在宅なのですか。
■小泉:そうです。今度3人目のお子さんが生まれると聞いています。
-----実際にそういう事例が目の前にあるわけなので、新入社員の方も「ああ、ここは子どもを産んでも、仕事が続けられる会社だ」と思いますよね。
■小泉:そうなんです。続けられるなら、頑張ろうと思うでしょう。
結婚したら辞めないといけない、デザイナーでなくなるとなれば勉強はしないし、新しいことを学ぶ精神力が途切れます。
しかし、続けられると思うから、意欲が違う。
実際うちの社員で25 歳くらいの時期のスキルをみてもらっても、他社と違うだろうと思いますね。皆、とても学んでいるし、一人一人の能力が高い。事務所にとってそれは財産です。
一般の企業ももっとひとりひとりを大事にしようと考えたらいいんでしょうけど、杓子定規に見えますね。まず、制度ありみたいな。
-----そうですね。女性を活用しているという企業でも、まだ社会がそうだからとか、大手などはそう言わないと対面が保てない部分もあるでしょう。
制度優先で、時代に引きずられての女性活用だと、いろいろな軋轢が起きることもあります。 やはり。御社のように女性を進んで採用したいんだと思われて、スタッフさんもそれに応えたいとなれば、状況が全然違ってきます。
会社のビジョンと自分のライフイベントが合致していないと、ちぐはぐになります。
■小泉: そうですね。男性社会がつくった決め事だからそうなるのだろうと思います。
結局、スピリットがそこになくて、形式的に女性を雇っても意味が無いでしょう。男女共同参画だとか、男女平等、機会均等だとか言っても、きめごとばかりです。それが、逆に変に平等扱いしなくてはならないということになってしまう。
本来、男性と女性が平等というのは無理だと思います。
それは、差別ではなく、本質的に違うし、得手不得手もあるでしょう。
それなのに、ハローワークでも「男女の区別は付けられません」と機械的に言われてしまう。年齢に関してもそうですけど。どの職業でも男女差はつけられないかというと、接客業でホステスさんならつけられると。
じゃあ、女性用の下着の販売員の求人ははと聞くと、区別できないそうなんです。でもそこに男性が応募して採用されるわけがないでしょう。そんな意味のない、歪んだ平等が分からないんですね。
うちなどは、女性スタッフがほしいのに、それはできない。
規則で縛るのではなく、もっと道徳的に女性活用を考えられないかとトップの人には言いたいです。
-----それ、すごく分かります。
■小泉:でしょう?規則で決めてどうこうっていうことじゃないですよね。
そこが欠けていて規則だけで決めるから、軋轢(あつれき)がおきているんだと思います。
----- なるほど。女性を上手く活用できないときに、言い訳として「制度ができてない」「社会構造が未熟」だという話になりがちですが、その「道徳」で考えるというのはすごく分かります。
女性の活躍というと、男性に負けないようにということだけがそうだとは、私は思わないんですね。
たとえば、御社で女性の No.2 やスタッフさんがきちんと業務を支えているというのも素晴らしい活躍です。
家庭では父権というか、大黒柱があって、それを支える内助の功があります。
それが家庭の中だけで押し込められてしまって、いざ社会にでるときに「男性と同じように働きなさい」と言われてしまいますね。適性や職業でもそういうモラルみたいなものがあるはずですね。適材適所というか、いい意味での役割を知るというようなところは活かせばいいと思います。
それは、ずっと女性を活用してこられた御社だからこそ、いまの形が一番やりやすいということになってきているんだと思います。
>続く
90歳でも現役のデザイナーでいたい 1-1(小泉達治さん・有限会社コイズミデザインファクトリー 代表取締役)
90歳でも現役のデザイナーでいたい
【ワークライフスタイル・インタビュー:1-1】
小泉達治 さん(有限会社コイズミデザインファクトリー 代表取締役 )
http://www.koizumidesignfactory.com
---- 聞き手: 前田めぐる
【ワークライフスタイル・インタビュー 1-1】1>2>3>4
9名中8名が女性、つまり社長以外は全員女性。
女性が働き続ける職場、京都のデザイン事務所 「コイズミデザインファクトリー」の小泉達治社長にお話をうかがいました。
前田---- 本日は、どうぞよろしくお願いします。
有限会社コイズミデザインファクトリーさんは、小泉社長以外は全員女性なのですね。
■小泉達治さん(以下名字のみ・敬称略):はい。ぼくをいれて8名、在宅社員を入れると9名。ぼく以外は全員女性です。
あとひとり、インターンのスタッフも女性です。
インターンは常時ではありませんが、年間に3-4名、専門学校や職業訓練校などから来てくれています。
----- 女性を前向きに採用しようと思われたきっかけは何ですか。
■小泉:創業当時、26年くらい前から意識していたわけでも、はっきりしたポリシーがあったわけではないのですが、専門学校や美術系の大学というのはもともと女性の割合が多いんです。もう本当に、8割、少なくとも7割とか。
特にぼくも学生時代(短大でしたが)、周囲は9割ぐらいが女性だったんですね。しかもそこに高校を卒業してポンっと入るでしょう。普通科の公立高校を卒業したぼくは、3年間ずっと制服だったんです。
学生服か、もしくは体育の時間に着るジャージかどちらかしか、学校で着ないでしょう。家に帰ったときに着るちゃんとした私服って3年間持っていなかったわけなんです。
ところが、突然短大で女子ばかりのところに入るとなると、18歳くらいの女の子って圧倒的におしゃれなんです。大人っぽいんですよ。
だから、自分がものすごく、遅れているというのか、ダサいと感じたんですね。
しかも、京都にある銅駝という美術の学校(京都市立銅駝美術工芸高等学校)から来た子などは、高校時代から私服なんです。
そんなところから来た女の子もいるので、そうするとほんとに格差がある気がしました。
しかも実習の作品を見ても、女の子の作品は垢抜けていました。いくら絵が上手とはいえ、普通科の高校を出たぼくからみれば、彼女たちの作品は垢抜けているんです。コンプレックスなくらいでしたね。
そんな彼女たちに追いつこうとがんばって卒業して、就職。
入った会社はアパレル関係にグラフィックやデザインを提供する会社だったので、やっぱりそこも女性社会なんです。
圧倒的に、女性のブランドのほうが数も多いし、華やか。男性に比べて感性も違う。またそういう中で3年くらい仕事をしました。
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---- デザイン事務所ですか?
■小泉:そうではなかったのですが、織りネームのメーカーだったので、織りネーム以外にもアパレルにいろんな提案をしていた会社です。ブランドのロゴをつくったり、ダイレクトメールをつくったり。
ショップで使うタグなどの細かいものまで……そのブランド運営に必要な販促物はすべてつくっていましたね。
----- なるほど。アパレル専門のデザイン事務所のような役割もあったわけですね。
■小泉:その会社にも男性はぼくだけでした。たまたまなんでしょうけれど。学校でも会社でも、周囲は女の子ばかり。
で、その会社にいた女性2人を連れて、独立したので、そのままずっと今に至るという感じですね。
特に男性を採用するきっかけがなかったとも言えますが、求人を出していても、結果的に女性を採用しているというのは女性の感性を目の当たりにしているというところは大きいですね。若かったので、ショッキングなまでに男女の落差を感じました。
高校を受ける前に、まず美術の先生からも銅駝(京都市立銅駝美術工芸高等学校)という高校があると打診はされたのですが当時、大学入試は共通一次だったんです。
総合点がラインに達しないと切られてしまい、実技試験にもたどり着けないために、普通科の高校を選びました。
ところが、高校3年になる前に父が亡くなったので、4年生をやめて、2年制に鞍替えしたんです。結局共通一次は受ける必要がなくなり、何のために普通科の高校を選んだってことになりましたけれど。
----- 普通科であっても、美術部には所属してらしたんですね。
■小泉:はい。受験対策もあったので、美術の先生から1年のうちから受験対策はしたほうがいいと言われ、入りました。そのときも、女性ばかりでしたね。男性はぼくともう一人だけ。合宿にいっても、女性ばかり。
そんなトラウマがあって、うちの息子2人は銅駝なんですよ。
----- では、息子さんたちもデザイン系のお仕事に?
■■小泉:ふたりとも今は働いています。上の子は東京でカメラマンのスタジオでアシスタントを。下の子は富山の大学でデザインをしています。
----- 富山は、デザイン、いいですものね。
■小泉: ええ、プロダクトはやはりいいです。何かしら関連がある仕事なので、楽しみです。
全く同じ仕事をするよりは、カメラマン、プロダクト、グラフィックとちょっとずつ違う仕事をしているほうが、面白いなあっていう気がしますね。
この仕事をまともに継いでほしいということはなくて、ちょっとずつ違う仕事でゆくゆく一緒にできればいいなと。
>続く
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