ワークスタイル・インタビュー 〜「自分らしく働く」を楽しんでいる人、「自分らしく働く」を応援する会社
ワークスタイル・インタビュー
このカテゴリーでは、
・「自分らしく働く」を楽しんでいる人、実践している人
・「自分らしく働く」を応援する会社
へのインタビューを掲載しています。
【ワークスタイルインタビュー 1】
小泉達治 さん(有限会社コイズミデザインファクトリー 代表取締役)
http://canyway.hatenablog.com/entry/2017/02/27/040129
http://canyway.hatenablog.com/entry/2017/02/27/074657
http://canyway.hatenablog.com/entry/2017/02/27/074818
http://canyway.hatenablog.com/entry/2017/02/27/074909
【ワークスタイルインタビュー 2】
絵本de手相心理カウンセラー 國本ひろみさん
http://canyway.hatenablog.com/entry/2017/04/23/163217
http://canyway.hatenablog.com/entry/2017/04/23/165715
http://canyway.hatenablog.com/entry/2017/04/23/170130
【ワークスタイルインタビュー 3】
ことばキャンプ 代表者、作家
NPO法人 JAMネットワーク 代表
高取しづかさん
http://canyway.hatenablog.com/entry/2017/06/18/090419
http://canyway.hatenablog.com/entry/2017/06/18/090547
http://canyway.hatenablog.com/entry/2017/06/18/083644
【ワークスタイルインタビュー 4】
株式会社オヤノミカタ 代表取締役 松井知敬さん
http://canyway.hatenablog.com/entry/2017/06/18/111407
http://canyway.hatenablog.com/entry/2017/06/18/111800
会社員をやり尽くした。フリーランスもやり尽くした。 次は起業しかないと準備していた時期に、たまたま「主夫」になった。4-1(株式会社オヤノミカタ 代表取締役 松井知敬さん)
会社員をやり尽くした。フリーランスもやり尽くした。 次は起業しかないと準備していた時期に、たまたま「主夫」になった。4-1
■ 話し手:株式会社オヤノミカタ
代表取締役 松井知敬(マツイトモヒロ)さん
---- 聞き手: 前田めぐる
「株式会社オヤノミカタ」と聞いて、あなたはどんな会社を想像しますか?
ホームページにはこう書かれています。
「オヤノミカタは、多様なメンバーと協力しながら課題解決に取り組んでいます。子育ての課題は、個人の努力では乗り越えられないものばかりです。わたしたちが「親の味方」となり、親たちを支え、課題解決に導きます」と。
その答えのひとつが、「オヤノミカタストア」。子どもを育てる環境の中で「あって助かる」「あってうれしい」、オヤノミカタになる商品を取り扱っています。
また、「オヤノミカタ交流会」「オヤノミカタマルシェ」など、子育ての周辺にある商品やテーマと出会うイベントを開催したり、他にも子育て関連領域のさまざまな企画に取り組んだり。
代表の松井知敬さんご自身も、中2(長女)、小4(長男)、年中(次女)のお子さんを育てる3児のパパとして、「オヤノミカタを増やしたい」と日々奮闘中です。
---- 会社員時代にワーカホリックになって、起業されたとうかがいました。
■松井知敬(以下敬称略)さん:そうですね。大学を出て会社勤めを1年。この時に妻と出会いました。で、独立して24歳でフリーランスになり、その翌年に結婚。子どもが生まれました。
このフリーランス生活を7年続けた後、広告代理店に4年間勤めました。ワーカホリックになったのはこの頃ですね。
すっかり仕事脳になっていて、時間があれば仕事。平日の家事育児はほぼ妻に任せきりでした。
その後、会社を辞め、起業準備に入りました。
---- 「1年限定で主夫になる」と宣言されたのは、その起業準備中ですか?
■松井:実は「主夫になる」と宣言したわけじゃないんですよ。妻はその頃少しづつ仕事をするようになっていて、たまたま私のほうが会社を辞めて、手が空いている。じゃあ、子どもをみたり、家事をしたりしてみようとなっただけで。ぼんやりとではあるけれど、子育て関連で起業しようとも思っていたので、自動的にそうなっただけでした。
---- 奥様はどんなお仕事を?
■松井:もともと司会の仕事をしていたんです。専業主婦になる前に少しそういう仕事をしていて、誘われてレッスンを受けて、地元のテレビ局でレポーターみたいなことをやったり、ウグイス嬢に派遣されたりしていました。
で、妻は専業主婦をやめて、最初アルバイトしようかな、パンが好きだからパン屋さんに行こうかな、なんて言ってたんです。
でも私が「アルバイトじゃなくて、昔やってたことをまたやれば」と言うと、妻は徐々に仕事を増やしていきました。
私としては、「まあ、今は自分が家のことをしてもいいか。準備できたら起業するから、そしたらまた分担もしてくれるだろう」という軽い気持ちで主夫生活が始まりました。
--- うまくいきましたか?
■松井:想像以上に大変でした(笑)。子育てしながら起業するのが。半年くらいで立ち上げる予定でいたけど、正直子どものことで手一杯になり、仕事なんか何も手につきませんでしたね。
起業準備どころか、育児に明け暮れる毎日で、へとへとで限界でした。
いっぽう、妻は妻でどんどん仕事も増えてくる。もともと自分で課題を見つけたらどんどん乗り越えるタイプ。仕事が楽しくてしかたないという感じで、完全に仕事脳・仕事モードの人になりました。
仕事脳の私と主婦脳の妻だったのが、半年経って、主夫脳の私と仕事脳の妻に。頭の中が入れ替わってしまったんですね。
--- 協力を求めましたか?
■松井:「助けて」と言いました。限界ギリギリだと思って。そしたら、妻が「何言ってんの?あなた、主夫でしょう」と。
限界だから泣きついているのに「なんて冷たいんだ・・」と憤りを感じた一方で、多分自分がフリーランスで妻が専業主婦だった時に同じことを言ってたんだろうなって思いました。
当時は妻が専業主婦で育児に対しての全責任を負っている状況でしたから、自分は在宅でフリーランスで、楽な気持ちで時間さえあれば仕事をしていました。
そして起業準備することにしたのが、いちばん下の子が1歳の時。初めて自分が全責任を負ったので、ほんとしんどくて。もしもずっと平行線のままなら離婚していたかもと思うくらい深刻でしたね。
でも幸い、その後妻と話していろいろすりあわせて、やがて今の50:50の分担になりました。
> 続く
このインタビューは、対談の内容をそれぞれの立場からのインタビュー形式にリライトしたものです。オヤノミカタレポートで、オヤノミカタ 公式キュレーター 松本裕美さんもう一つのインタビューをご覧ください。
イクメン推奨派ではありません。 でも、「育児と家事を50:50で分担してみれば得るものがある」と伝えたい。4-2 (株式会社オヤノミカタ 代表取締役 松井知敬さん)
イクメン推奨派ではありません。
でも、「育児と家事を50:50で分担してみれば得るものがある」と伝えたい。
--- 共働きで、50:50であれば理想ですね。
■松井:はい。しかし、この協働状態をつくるのは、相当至難の技です。自分の場合は、なんとか軌道修正できたけど、できずに終わる家庭も多いだろうと思います。
想像には限界があります。夫が1年ぐらい主夫を経験しないと、「妻:夫=50:50」のバランスをつくるのは無理かもしれませんね。自分も経験したから分担しようと言えるけれど、経験せずにはとても言えない。
だって、フリーランス時代には床で子どもが泣いていても妻がいたからそのまま仕事をしていました。妻が育児の責任を負っていたときは、そこまで神経をすり減らさずにすんでいたんです。
--- なるほど。そんな松井さんは、よくイクメンと紹介されているのではありませんか?
■松井:ええ、正直とまどいます。「イクメンを増やすにはどうしたらいいですか?」と聞かれても、イクメン推奨派ではないですから。
イクメンどうこうよりも、育児や家事を50:50で分担してみることについては、得るものがあるとは言いたいですね。
--- 家事育児の分担については、年代によっては「0:100」の夫婦が大半でしょうね。また、実際には夫:妻が「10:90」くらいなのに、夫だけが「30:70」くらいのつもりだという夫婦も多いでしょうね。最近になり、少しずつ「育児も家事も夫婦で分担しよう」という人たちが増えてきていますね。子どもがいながら働く母親もやっと5割を超えたそうです。
育休も今は女性主体ですが、男性も積極的に育休を取るようにすると松井さんのような理解者が増えて、会社としても戦力になりますね。
■松井:育児商品を開発したい時、今までは育児経験のある女性スタッフしか関われませんでした。その商品を父親も使う可能性が高いとなれば、男性も育児を経験しておくといいですよね。
私は専業主婦時代のストレスを抱える妻を間近に見ていて「何かそこに課題がある」と思っていました。その課題は、体験してみて初めてわかることばかりでした。
--- それが「オヤノミカタ」の原点ですね。
■松井:はからずも主夫生活を自分が1年間やって、大変だったので、まさにその時の自分を助けたいという気持ちでやっています。育児には親以外の誰かのサポートがないと、と実感しました。
今うちの子たちは、上から中2(女)、小4(男)、年中(女)なんですが、育児ってほんとにいろんなステージでいろんな課題があっていろんな助けが必要だなと思うんです。
--- 赤ちゃん期だけが育児じゃないですものね。たとえば、よく言われる「小1の壁」はどうでしたか?
■松井:うちは小学校入学当時、学童に行かせたくてトライしたんですけれど、初日から嫌だと言って行ったり行かなかったり。
私が家にいたので3時に帰ってきても大丈夫かと思いつつ、でも夏休みは行ってくれとか、いろんな思いが行き来しました。で、やっぱり合わなくて、2年生くらいで完全にあきらめましたね。
--- 合う合わないというのがありますね。子どもによっても、その場所によっても違うし。どれが正解なんてないのが育児だなといつも思います。松井さんの会社は、育児中でも親が勤めやすい環境を作っておられるでしょう。
夫婦共働きが増えるこれからの、まさにロールモデルになるワークスタイルだと感じます。
■松井:ありがとうございます。ロールモデルというのは意識しているところです。
今は3期目にはいりましたが、メンバーは皆在宅で仕事をし、「オフィスを持たない会社」を実践中です。ベンチャーなので、起きる変化に常に柔軟に対処しようとしたら自然とそうなりました。
--- オヤノミカタになる商品をオンラインで販売されていますね。
■松井:自分でサービスをしたい、自分で何かを提供したいという思いがありました。
商品があって広告があれば売れるというんじゃなくて「商品が良くないと売れないよ」と思うんです。
でも、広告代理店時代は、そういう踏み込んだことを言えませんでした。クライアントの商材開発まで関わりたいと思っていろいろ試みましたが、結果的に無理だったから辞めたという経緯があります。
また、会社の中で新規事業を立ち上げようとしたんですが、既存の事業をしている人たちは「この人たちは何をしているの?」という見方をします。ただでさえやることがいっぱいで大変なのに、そんな他部署の人の調整までしながら事業を起こすのはすごく難しかったですね。だから独立して、起業しました。働き方についてはとても興味深いです。
--- ええ。よく会社員で自分の能力が今の部署で活かせていないという人がいますよね。自分の望む場所で、自分の望む働き方をしている人はひとにぎりかもしれません。
■松井:通常の組織は管理職の下に社員が広がるピラミッド状です。それだとどうしても誰々のせいとか、環境のせいということになってしまいます。
その点、面白いなと思ったのが「特定非営利活動法人くさつ未来プロジェクト」というNPOです。
2006年に始まった育児サークルが前身で、子育て支援や地域支援、家庭教育支援を行っているところですが、そこのメンバーの方々がみな横並びなんですよ。
誰かが「今こんなこと興味あります」と声を上げると、言いだしっぺがリーダーになって、他のメンバーがサポートに回るという図式です。
この横並びの構成を最初に聞いた瞬間、「超最先端だ!」と思いましたね。
すると、やはり今面白いことになっていて、何千人規模のイベントをやったり、いろんな人を巻き込んだりする組織に発展しています。
--- その組織が大きくなるの、わかります。育児はもう、一昔前のように、母親だけが背負うものではなくなってきているという証拠でしょうね。
■松井:私自身、育児を任されていたときは自分をすごく追い詰めてしまいました。目標を立てすぎて今までの仕事のやり方と同じようにやってつぶれそうになったり。
今は違う考え方をするようになりました。自分にできることをやればいいんだ、と。男性が育児をする価値というのは、そこだと思うんです。
ツイッターでお母さんと会話していると「夫が冷たい、なぜ自分を思いやってくれないのか」という話をよく聞きます。でも仕事がメインで仕事脳になるとその考え方にいかないんです。仕事脳になると、それはあなたの仕事だからあなたが頑張ればいいとつき離してしまうんです。
私の場合は、自分で子育てを体験したから、本当にどうしようもないことがあるとわかりました。
今まで仕事をしてきて課題解決は当然のことだったので、育児でも何か課題を見つけたら絶対乗り越えられると思っていました。
でも「仕事とは違う、ひとりでは乗り越えられないものがある」と知ったんです。初めて気づいて、それはすごく大きかった。いろんな立場の人の気持ちがわかり、自分の幅が広がりました。
だから、ぜひ男性は「主夫」をやりなさい、とは言えないけれど、やって体験すると得るものがあることは伝えたいですね。
--- これからどんなテーマに取り組んでいきたい、というお考えがありますか?
■松井:今は、自分も会社も下積みの時代だと思っているんです。私自身、いろんな人と出会って、ネットワークもつくりながら、情報発信もしながら親としての体験、会社としての体験を重ねていきたい。
その体験を生かして、さまざまな問題解決をしながら、自分たち以外の「オヤノミカタ」もふやしていけたらと思っています。
本当に、体験が私たちの味方をしてくれますね。
子どもと親を取り巻く状況は、日々変わります。そして、目の前の子どもたちもめまぐるしく成長していきます。
これから、どんな体験をされ、どんな出会いをされ、どんな課題を見つけていかれるのか。
私も、その未来が楽しみでなりません。本日はありがとうございました。
■松井:ありがとうございました。
松井知敬さん プロフィール
1978年生まれ。灘中、灘高、京大工学部を卒業。在学中にWeb制作を始め、その後、IT業界で活動。ワーカホリックな会社員生活から、一転、子育て中心の主夫生活へと移行し、子育てにおける両端の立場を経験。子育てを大変にしている要因は何なのか、親たちの深層心理やその裏にある社会背景を読み解いていく「オヤノミカタブログ」の筆者。36歳で株式会社オヤノミカタ設立。滋賀県大津市在住。3児のパパ。
株式会社オヤノミカタ
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オヤノミカタブログ
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このインタビューは、対談の内容をそれぞれの立場からのインタビュー形式にリライトしたものです。オヤノミカタレポートで、オヤノミカタ 公式キュレーター 松本裕美さんもう一つのインタビューをご覧ください。
アメリカのオーラルコミュニケーションそのままではなくて 日本流に消化して、融合させて、新しい価値をつくりました。3-3(ことばキャンプ 代表者 高取しづかさん)
アメリカのオーラルコミュニケーションそのままではなくて
日本流に消化して、融合させて、新しい価値をつくりました。
■話し手:ことばキャンプ 代表者、作家
NPO法人JAMネットワーク 代表
高取しづかさん
---- 聞き手: 前田めぐる
■高取:アメリカのものを紹介するだけでなく、それを完全に消化して生かしながら、日本人向けのコミュニケーショントレーニングというかたちで出したかったんです。
アメリカの家庭や学校で行われている話すトレーニングをヒントにして、日本の家庭で取り入れられるような提案ができないか、と話し合いをすすめました。
アメリカでオーラルコミュニケーションを語り合った仲間と、子育てネットの仲間とでは求めているものが違い、ときには喧々諤々の議論になったこともあります。
こうして生まれたのが、『親子で育てる「じぶん表現力」―毎日家庭で着実にできるトレーニングブック』(2002年主婦の友社)です。アメリカで行われていたトレーニングには7つの要素があることに気づき、「度胸力・論理力・理解力・応答力・語彙力・説得力・プレゼン力」のトレーニングをすることで、聞く力、話す力を鍛えていこうというものです。
コミュニケーション力は、スポーツと同じで、練習すれば必ずアップします。自分も相手も大切にすることばのチカラを身につけて、自信をもって生きていってほしいという趣旨の本です。
これを出したときは「新しい子育ての本」と思った人がすごく多かったですね。新しい価値を提供するということに魅力を感じていて、そのエネルギーで本を作ってきたのかもしれません。ほとんど口コミで10万部売れました。
日本の学校でも2002年から「伝えあう力」を育てようとスローガンが打ち出されていたので、全国の小学校から問い合わせをいただきました。
---- アメリカで見つけた「すごくいい」をまず消化して、そこからさらに日本流のオーラルコミュニケーションという新しい価値を生み出された。
わくわくするご活動ですね。ことばキャンプでは、実用絵本「ことばキャンプ」という全5巻の絵本にされましたが、この絵本もとてもわかりやすく、親子ですぐに取り組めると感じました。
■高取:この絵本を使いながら、子どもたちの力を引き出す絵本ファシリテーターの養成を行っています。
・おそれずにいうチカラ
・きいてはなすチカラ
・ことばをしるチカラ
・はなしをくみたてるチカラ
・ひょうげんするチカラ
また、より実践的な話すチカラ、聞くチカラのトレーニング「ことばキャンプ」教室を主宰していて、キッズインストラクターを養成しています。ことばキャンプについては、『コミュニケーション力を育てる 実践 ことばキャンプ』に書いています。
ことばのチカラは偉大です。
15年かかわってきて、つくづく感じます。ことばのチカラは、生きていくための武器になると確信しています。
現在、社会貢献活動として、東京都と神奈川県や千葉県の児童養護施設に出向いて、子どもと職員の方たちに研修を行っていますが、そのことを実感します。
施設に入所している約6割の子どもが虐待や育児放棄を受けています。親との良好なコミュニケーションがないので、学校や社会に出てからコミュニケーションで躓いてしまうんです。
子どもたちの存在肯定を主軸にして、考える力を深めながら、人とかかわりあう力を伸ばす活動を、息長く続けていきたいと思っています。
---- 子どもだけでなく、ママ・パパの関わり方、ほめる・しかる実践ワークなど、さまざまな講演会もなさっていますね。
ことばキャンプのご活動も神奈川・東京だけでなく、長野・大阪・兵庫・石川と全国に広がっていることをうれしく思います。
本日はありがとうございました。
■高取:ありがとうございました。
--------
【ことばキャンプ:私たちの思い】より
http://kotobacamp.com/index.php/thought.html
高取しづかさん プロフィール
NPO法人JAMネットワーク代表。神奈川県子ども・子育て支援活動アドバイザー。2003年、アメリカで出会った仲間や日本の友人たちと「子どもと親等のコミュニケーションスキル育成」を使命とするJAMネットワークを結成。
以後、子どもや女性の視点で、子育てや教育、生活全般に関する新聞・雑誌・本の執筆を行う一方、各地での講演活動も。
ゴールドマン・サックスと東京都社会福祉協議会が実施している、『ゴールドマン・サックス・ギブズ・コミュニティ支援プログラム』社会貢献プロジェクト団体に選ばれ、東京・神奈川の児童養護施設で子どもと職員向けにコミュニケーションスキルのトレーニングを実施している。
NPO法人JAMネットワーク 代表者
**JAMは、Japanese & American Mothersの頭文字。アメリカで活動を始めたグループに日本のメンバーを加えて結成し、2003年、「コミュニケーション能力育成」を使命としたNPO法人に認証。
ことばキャンプ | ことばのチカラで自立しよう
「幸せになれる子」に育てたい あなたへ
http://www.takatori-shizuka.com
書籍
『子どもが変わる「じぶんルール」の育て方シリーズ 全3巻』や『 ことばキャンプシリーズ 5巻』(いずれも高取 しづか 著, JAMネットワーク 著、合同出版刊)など、ことばの力を中心に、子どものさまざまな力を育み、自立を促す著書多数。
その他著書はこちらから→ http://www.takatori-shizuka.com/books
ことばキャンプ1 ゆうきのれんしゅう: おそれずにいうチカラ
- 作者: 高取しづか,JAMネットワーク,阿部伸二
- 出版社/メーカー: 合同出版
- 発売日: 2014/01/20
- メディア: 大型本
- この商品を含むブログを見る
ことばキャンプシリーズ 5巻
左から
ことばキャンプ1 ゆうきのれんしゅう: おそれずにいうチカラ
ことばキャンプ4 あたまのせいり: はなしをくみたてるチカラ
子どもが変わる「じぶんルール」の育て方 シリーズ
皆が平均的に「いい」ではなくて、 自分が「すごくいい」と思うこと。それが渡米先で見つかりました。3-2(ことばキャンプ 代表者高取しづかさん)
皆が平均的に「いい」ではなくて、 自分が「すごくいい」と思うこと。それが渡米先で見つかりました。
■ 話し手:ことばキャンプ 代表者、作家
NPO法人JAMネットワーク 代表
高取しづかさん
---- 聞き手: 前田めぐる
独立してフリーのライター仕事が順調に増えてきたころ、夫がアメリカに転勤することになりました。
---- どうされたのですか?
■高取:そのときやっていたライターの仕事を全部やめて、夫・子供と一緒にアメリカに行きました。締め切りに追われる生活に、疲れてきたという面もありました(笑)
アメリカでは、見るもの聞くものすべて面白かったのです。
子育てネットで、自分たちの経験や感じたことを後輩ママたちに伝える本を書き続けていました。主宰者の髙橋さんに言われたのが「みんなが平均的にいいということではなく、あなた自身がすごくいいと感じたことを大事にして書いてね。それが人に伝わるから」ということでした。
つまり、「こんなことが受けるんじゃないかな」ということではなく、自分が心から「面白い!」とか「役に立つ」と本音で思ったこと、そこを大事にして、あなたの感覚で書きなさい、ということを言われていたんですね。
アメリカで暮らしていて、「これは日本のママに伝えたい!」ということがいっぱいあったんです。
その中でもっとも心惹かれたのが、アメリカの学校や家庭で行われていたオーラルコミュニケーションのトレーニングでした。
実は私は、人前で話すことが大の苦手。日本にいたとき会議の席で発言の機会があっても、頭が真っ白。10人以上いると、あがってしまって伝えたいことが言えなくなってしまいました。書くことはそこそこなのに、話すことにまったく自信がなかったんです。
「プレゼンが上手になりたい、アメリカはプレゼンの本場。行ったらぜひ学びたい」と思っていました。
ところが、地域で行われている講座にはプレゼンテーションのクラスを見つけることができませんでした。
ところがしばらくたって、その理由がわかりました。
アメリカ人は幼稚園や学校で、子どものときから人の前で話すオーラルコミュニケーションを学んでいたのです。
当時、アメリカで知り合った「本を作りたい」という日本の女性たちから誘われ、アメリカの暮らしを書いてまとめるサークルに所属していました。みんな何かやりたくて仕方がない女性たち。
オーラルコミュニケーション教育のテーマに「すごく面白い!」と興味をもってくれました。
そこで私たちは、子どもたちが通っていた現地校にお願いして、授業を見学したり、幼稚園にボランティアとして入りながら、アメリカの幼稚園や学校で行われていたオーラルコミュニケーションのようすをつぶさに見せていただきました。日本人がアメリカの学校に興味をもっていることを面白がってくれて、どの学校でもとても協力的でした。
また、ミシガン州の教育委員会の委員長を始め、先生方に取材をしたり、みんなでいろいろ歩き回りました。また、現地のママたちに集まってもらい、家庭で行っていることばの教育をテーマに、座談会もしました。そんなこともまとめていきました。
日本人はせっかくいいところがたくさんあるのに、発信力が少なく伝えきれていなくてもったいない。これからの子どもたちには、自分の気持ちや考えをことばを使って表現できるようになってほしいと、強く思うようになっていました。
私たちは、いつしか「日本の子どもたちのために何かをしていきたい!」と大きな野望を持つようになりました。
2001年に帰国して、さっそく本の出版に向けて動き始めました。アメリカでいっしょに行動していた仲間たちの「野望」を実現したい!!スーツケースいっぱいの資料を持って、主婦の友社の編集者に会いに行きました。かなり暑苦しかったと思います(笑)。
編集者の方に情熱が伝わって、出版の企画が通りました。
子育てネットとしてではなく、初めての自分企画による本です。
私たちは母親のグループだったので、ターゲットは家庭向けということになりました。
せっかく出版するのですから、ママ目線で「こんな本が欲しかった!」と思ってもらえるような、日本の親子にとってほんとうに必要なものを届けたいと思いました。
そこで、友人でもあった子育てネットメンバーの主力メンバーたちを引っ張り込んで、本づくりが始まりました。
ところが、子育てネットのメンバーたちは「アメリカ人みたいな堂々とした立派なスピーチなんて遠い話」と言うのです。でもよく聞いてみると、子どもたちは話し下手で誤解されたり、損をしているから「自分の気持ちを言えるようになってほしい」と願っていました。
日本人のコミュニケーションってなんだろうということも、ものすごく考えましたね。「以心伝心」でわかりあえる、ことばを尽くさなくても「察し合う」ことでコミュニケーションしてきた日本。でもこれからは、日本でもことばを使って自分を伝えるスキルを身につけなければならない、という点で一致しました。
>続く
ママ目線で書いたことで、公共トイレが変わった! ささやかだけれど、社会を変えられると思った瞬間。3-1(ことばキャンプ 代表者 高取しづかさん)
【ワークライフスタイル・インタビュー 3-1】
■ 話し手:ことばキャンプ 代表者、作家
NPO法人JAMネットワーク 代表
高取しづかさん
---- 聞き手: 前田めぐる
もしあなたにお子さんがいらしたら『子どもと出かけ〇〇遊び場ガイド』(丸善メイツ)という本を見たことがあるかもしれません。
1989年頃から東京を皮切りに各地で発刊され、ブームになった本です。子どもと一緒に出かけられる場所がいっぱいあるんだなとうれしくなったのを思い出します。
今も年刊になっているそうで、最近になり、この本に高取しづかさんが深く関わっておられることを知りました。
どんな風に、ライターとしてスタートされたのかというあたりから、お話をうかがってみました。
ママ目線で書いたことで、公共トイレが変わった!
ささやかだけれど、社会を変えられると思った瞬間。
---- 執筆の世界には、どんな風にして進んでこられたのですか?
■高取しづかさん(以下敬称略)
大学卒業後、大手企業に入社しました。当時は総合職とかなく、毎日お茶汲みやコピーの日々にあきたらず、夜、速記の学校に通っていました。書くことにかかわりたかったんですね。結婚退職後は、編集プロダクションのアルバイトをしていました。編集だけでなく記事を書きたい!と思うようになり、夫からも「もっともっとがんばれ」と乗せられて(笑)雑誌の取材記者になったんです。
消費者関連の小さな雑誌だったから、企画して取材し記事にまとめたり、他にもなんでも自分でやりました。企業や役所、研究所などどこへでも突撃して、たくさんの人の話を聞く日々はすごく面白かったです。
子どもが生まれて雑誌社を退社しましたが、その後も細々と記事を書く仕事は続けていて、幼稚園に入園と同時に雑誌社に復帰。子どもを育てながら、取材記者として駆け回っていたんです。
---- 本の執筆はどんなことがきっかけだったのですか?
■高取:そんなとき、友人に誘われ「子育てネット」のメンバーになりました。
編プロを経営していた友達と4人で、ママだって出かけたい!遊びたい!「じゃ、自分たちが欲しい本を作ろうよ」と話している中から「子どもと遊ぶあそび場ガイド」の企画ができました。
これはほんとに大ヒットしたんです。20年前のことでテレビにも出ました。
「あそこいいよ」と誰かが聞けば、子どもを連れて出かけてみる。私も、幼稚園就園前の娘と一緒に、たくさんの遊び場に出かけました。飲食店なら実際に食べてみる。トイレがあれば使ってみる。遊び場があれば遊ばせてみる。その遊び場が、子連れにとって本当にいい遊び場なのか、ママ目線でチェック。自分たちが子どもを連れて歩き、見たもの、感じたことを細かいところまで記録。イラストレーターに伝えて、楽しいイラストにしてもらいました。
そんな風にママたちの手でつくられた本は、大手新聞社からの取材も受けました。
「ママの目チェック」で公共トイレが変わった、という話を聞いて「ささやかだけれど、社会を変えられる」と感動しました。
⇦今も年間になっているあそび場ガイド
--- その感動が、後に立ち上げられるJAMネットワークの原点になったのではないでしょうか。
『遊び場ガイド』は、まさに新しい育児本のさきがけでしたよね。私も、子どもが小さいときに買いました。あの本から、ママ目線の本が増えていきましたね。今のようにインターネットの情報もなかったので、すごく助かりました。
■高取:ありがとうございます!「こんな本が欲しかった」といろんな人に言われました。
取材記者をしていたので、子育てネットの本作りにも関わらせていただきました。でも、本作りを手伝っていたあるとき、子育てネットの主宰者の高橋さんにすごく怒られたんです。
「うまいけど、流して書いてる。どうせ書くなら今までにない視点で書きなさい。本当に読者にとって意味のある本を作りましょうよ」と言われました。
ハッとしました。髙橋さんは厳しかったけれどクォリティの高いものを作る人でしたから、そう言われて落ち込みつつも、たくさんの学びを得ました。
>続く
「ソーシャル広告」と「クリエイティブ広報」〜広告と広報の融けはじめた際
「広報」と「広告」は、しばしば混同されます。メルマガ広告に「PR」と注意書きがついていたり、よくできたPR動画、を「これ、CM?」という人がいたり。
紛らわしいようですが、別のものです。
ニュース番組をイメージすれば、明快でしょう。番組でニュースの合間に流れるCMをつくるのが「広告(Advertising)」、番組のなかでニュースとして流してもらえるようにメディアに対して活動するのが「広報(PR/Public Relations)」です。
新聞でもそうですよね。
新聞の記事のところに無料で掲載されるようにするのは、広報の仕事。
有料で新聞広告をつくるのが、広告の仕事。
コピーライターである私は、広告も広報もしますが、この二つは全く別のものです。
けれど、限りなく近づいているし、そういう風に発信するほうがうまくいくのです。
・いかにも広告風な広告は「これ、モデル代が商品価格に反映されてるから高いのかな」と思われる節がある
・社会的意義から訴求する「ソーシャル広告」の方が支持されやすい風潮がある
・情報過多の時代、広報だからと言って、ただ伝えるだけでは伝わらない。「株式会社京都」「株式会社東京」と名乗りたいほどアピールしても「県民愛・地元愛」があるので、いやらしいとは感じられない。工夫して「クリエイティブ広報」にトライしよう。
というような趣旨のことを、公益社団法人『月刊広報』4月号で執筆しました。
いま 広報に必要な「広告的発想力」〜月刊『広報』で「広報力」を高める“キーワード”
御社の「社外広報」としてアドバイスします。